10ギガ光回線にしても速くならない?宅内機器の落とし穴を現役工事人が解説

10ギガ光回線を契約しても速くならない理由を現役工事人が解説。ルーター、LANケーブル、ハブ、パソコンなど宅内機器のボトルネックと、契約前に確認したいチェックリストをまとめました。

ONU、Wi-Fiルーター、1Gハブ、LANケーブル、パソコンが並び、1Gハブが通信経路のボトルネックになる図解

「どうせなら一番速い10ギガにしようかな」。最近、現場でもこの言葉をよく聞くようになりました。

ただ、正直に言います。10ギガを契約しても、その速度を活かせる環境になっているご家庭は、私が現場で見る限りごく少数です。しかも、私たち工事人はお客様の機器構成を見てそれに気づいても、契約プランの是非について立ち入って指摘できる立場ではありません。回線は開通し、工事は成功し、でも速度は変わらない。誰も悪くないのに、お客様だけが損をする構図がそこにあります。

だからこの記事では、契約前のあなたに向けて、現場で見えている「宅内機器の落とし穴」を全部書きます。

そもそも10ギガ回線とは

通常の光回線(最大1Gbps)の約10倍、最大10Gbpsをうたう上位プランです。ここで押さえたいのは、10Gbpsはベストエフォート(理論上の最大値)であること、そしてその速度が意味を持つのは、宅内の経路すべてが対応している場合だけだということです。

最大の落とし穴:経路に1か所でも非対応機器があると、そこで頭打ち

回線からあなたの画面までのデータの通り道は、こうなっています。

ONU → ルーター →(ハブ)→ LANケーブル → パソコン・ゲーム機などの端末

この経路は「一番遅い場所」の速度しか出ません。回線が10Gbpsでも、途中に1Gbps対応の機器が1つ挟まれば、そこから先は最大1Gbpsです。

ONUからパソコンまでの経路で、中央の1G対応ハブだけがオレンジ色で強調されたボトルネック図
回線が10Gbpsでも、経路の中で一番遅い機器の速度までしか出ません。

以下、経路上の機器を順にチェックしていきます。

ルーター:WANポートが10GbE対応か

一般的な家庭用ルーターのポートは1GbE(1Gbps)です。10ギガ回線を活かすには、WANポートが10GbE対応のルーターが必要です。ここは比較的知られてきていて、現場でも「10ギガ用にルーターは買い替えました」というお客様は増えました。問題はここから先です。

LANケーブル:Cat6A以上か

規格 対応速度の目安 備考
Cat5e 1Gbps 現在も広く使われている
Cat6 1Gbps(短距離なら10Gbps)
Cat6A以上 10Gbps 10ギガ回線ではこれを使う

家に転がっている古いケーブルの使い回しは要注意です。ケーブルの側面に「Cat5e」などの規格が印字されているので、確認してみてください。

スイッチングハブ:見落とされがちな中継機器

ルーターから複数の機器へ分岐させるハブを挟んでいる場合、そのハブも10GbE対応でなければそこで頭打ちです。ルーターとケーブルを揃えても、間の古いハブが1GbEだった、というのは典型的な見落としポイントです。

パソコン:無線ノートPCでは受け止められない

ここが現場で見ていて一番多いパターンです。ノートパソコンをWi-Fiで使っている限り、10Gbpsを受け止めることはできません。 Wi-Fi 6以降の環境でも、実測で10Gbpsに迫ることはまずないですし、そもそもノートPC側の無線性能が先に上限になります。

有線で受けるにしても、パソコンの内蔵LANポートは大半が1GbEです。10Gbpsを受けるには10GbE対応のLANアダプタやカードの増設が必要で、ここまでやっている一般家庭はほとんど見たことがありません。

ゲーム機・テレビ・スマホ:そもそも対応していない機器が大半

SwitchやPlayStationなどのゲーム機、スマートテレビ、スマホ。これらの通信ポートや無線性能は、10Gbpsを前提に作られていません。「ゲームのために10ギガ」と考えている方は多いのですが、ゲーム機側が受け止められない以上、回線を10ギガにしても体感は変わりません(オンラインゲームで重要なのは速度よりも応答速度で、これは1ギガ回線でも十分確保できます)。

契約前チェックリスト

10ギガを申し込む前に、次を確認してください。

  • ルーターのWANポートは10GbE対応か(または対応品を買う予定があるか)
  • LANケーブルはCat6A以上か
  • 経路にスイッチングハブがあるなら、それも10GbE対応か
  • 速度を出したい端末は有線接続か、10GbE対応のポート/アダプタがあるか
  • 主な用途の機器(ゲーム機・テレビ・スマホ)が、そもそも高速通信を受け止められるか

正直なところ、すべてにチェックが付く家庭はかなりの少数派です。1つでも「いいえ」があるなら、その機器の速度があなたの家の上限になります。

そのほかに知っておきたい注意点

宅内機器ほどではありませんが、次の点も契約前に確認しておきましょう。

  • 提供エリアは1ギガより狭い:10ギガは別設備のため、1ギガのエリア内でも未提供の地域があります。マンションは建物の対応も必要で、さらに限られます。
  • 既存の光回線があっても、機器の交換は必ず発生する:既に引き込まれている光ケーブルは基本的にそのまま使えますが、ONUは10ギガ対応のものへの交換が必ず必要です。派遣工事になるか、機器の差し替えだけで済むかは事業者の案内で確認してください。
  • 実測で10Gbpsは出ない:ベストエフォートのため、環境を整えても実測は理論値を大きく下回ります。期待値は「1ギガの数倍」程度が現実的です。
  • 月額も機器代も高くつく:回線の差額に加え、10GbE対応機器への投資も必要です。金額は事業者・プランによって異なるため、最新の料金を確認してください。

10ギガが向いている人・1ギガで十分な人

10ギガを検討する価値がある人

  • 数十GB単位のファイルを日常的にやり取りする(動画制作、開発など)
  • 有線環境と10GbE対応機器を揃える意思と知識がある
  • 家族が多く、同時に高負荷な通信をする時間帯が長い

1ギガで十分な人

  • 利用が動画視聴、Web、オンラインゲーム中心
  • 接続端末が主にスマホ・タブレット・無線ノートPC
  • 宅内機器を買い替える予定がない

現場の実感で言うと、大半のご家庭は1ギガで十分です。速度に不満がある場合も、原因が回線ではなくルーターの古さや置き場所にあることの方が多い、というのが正直なところです。

よくある質問

今の1ギガが遅いので10ギガにすれば速くなりますか?

まず遅い原因の切り分けをおすすめします。ルーターの規格が古い、置き場所が悪い、Wi-Fiの電波干渉など、宅内側に原因がある場合、10ギガに変えても改善しません。有線直結での速度とWi-Fi経由の速度を比べてみると、原因の見当がつきます。

将来のために10ギガにしておく意味はありますか?

機器を順次買い替えていく予定が具体的にあるなら意味はあります。ただ、予定がないまま「とりあえず」で契約すると、差額を払い続けるだけになりがちです。必要になったタイミングでプラン変更する方が合理的です。

マンションでも10ギガは使えますか?

建物の設備次第です。対応している建物はまだ限られています。エリア判定と建物の対応状況を事業者のページで確認してください。

まとめ:10ギガは「宅内が対応してこそ」

10ギガ回線で一番大事なことは、シンプルにこれだけです。

回線からあなたの端末までの経路に、1か所でも非対応の機器があれば、そこがあなたの家の上限速度になる。

そして、そのことを工事当日に工事人から指摘してもらうことはできません。契約してからでは遅いので、申し込む前にこの記事のチェックリストで宅内の機器を確認してみてください。その結果「1ギガで十分」となっても、それはまったく恥ずかしいことではなく、多くのご家庭にとって正しい選択です。

工事そのものの内容が気になる方は光回線工事は何をする?タイプ別のやり方もあわせてどうぞ。

光回線の現役工事人のイラスト

この記事を書いた人

光回線の現役工事人

現役の光回線工事スタッフとして、いまも日々現場に出ています。戸建て・集合住宅の開通工事の経験をもとに、工事前に知っておきたいことを解説しています。

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