新築戸建ての光回線|建築中にやっておくべきことを現役工事人が解説
新築戸建ての光回線は、設計段階の準備で決まります。現役工事人が情報分電盤の位置、各部屋への空配管、引き込み経路、申込みのタイミングまで打ち合わせで伝えることを解説します。

新築のお宅に開通工事へ伺うと、「ここ、もう少し考えておけばよかったのに」と内心思う場面がときどきあります。設備自体は新しいのに、Wi-Fiが家の隅からしか飛ばせない間取りになっている、といったケースです。
私たち工事人にできるのは、決められた条件の中で回線を引き込むところまで。家の中の通信環境の土台は、設計と施工の段階で決まってしまいます。この記事では、これから家を建てる方に向けて、着工前・建築中にやっておくべきことを現場目線でまとめます。
時期ごとにやること早見
| 時期 | やること |
|---|---|
| 設計・打ち合わせ | 情報分電盤の位置決め、各部屋への配管・LAN配線の依頼 |
| 建築中 | 引き込み経路の確認、ハウスメーカーとの役割分担の確認 |
| 引き渡しが見えたら | 住所確定後に回線を申込み、工事日の枠を確保 |
| 引き渡し後 | 開通工事(鍵の引き渡し後でないとできません) |
以下、それぞれ詳しく説明します。
設計段階:情報分電盤の位置が一番の分かれ道
最近の新築戸建てでは、情報分電盤(情報ボックス)を設ける家が増えています。テレビ・LAN・電話の配線を壁の中の樹脂ボックスに集約する設備で、光回線のONUやルーターもこの中に収める設計が一般的です。一方で、付いていない家もまだ多くあります(この差が後々効いてくる話は後述します)。
配線の起点としては優れた設備ですが、Wi-Fiの発信元としては不利です。理由は3つあります。
- 壁の中の閉じたボックスなので、そこで電波が減衰する
- 設置場所が洗面所・収納・玄関脇など、家の隅になりがち
- 狭い密閉空間で熱がこもりやすい

打ち合わせで伝えておきたいこと
①できるだけ家の中心寄りに配置してもらう 間取りの都合があるので必ず通るとは限りませんが、「通信機器を入れるので、できれば家の中心に近い場所に」と伝えるだけで検討してもらえることがあります。
②ボックス内に電源コンセントがあるか確認する ONUもルーターも電源が必要です。ボックス内にコンセントがない仕様だと、あとから困ります。
③リビングなど「よく使う部屋」にLANポートを用意しておく これが後述するルーター2台構成の前提になります。最低でも1か所、できれば各部屋に欲しいところです。
設計段階:各部屋への配管とLAN配線を頼んでおく
壁の中に空配管(CD管など)を通しておいてもらう。これが、新築でやっておく価値の最も高い依頼です。
配管さえ入っていれば、あとからLANケーブルを追加したり、規格の新しいものに入れ替えたりできます。逆に配管がないと、後から配線するには壁を開けるか、露出配線にするしかありません。
分かれ道は「情報分電盤があるかどうか」
情報分電盤が付いている家なら、そこから各部屋まで配管が通っているのが基本です。つまり、後から配線を足す余地が最初から用意されています。
問題は、情報分電盤自体が付いていない家も多いということです。この場合、各部屋への配管もないので、後から有線を引きたくなったときの選択肢が一気に狭まります。
省かれる理由の多くは「どうせWi-Fiで使うから、有線はいらないだろう」という判断です。気持ちは分かりますが、情報分電盤と各部屋への配管は、まず損をしない投資だと思っています。
というのも、通信環境の必要性は住んでいるうちに変わるからです。よくあるのが、お子さんが大きくなってオンラインゲームを始め、「有線で繋ぎたい」となるケース。ほかにも在宅勤務の部屋を移したい、上の階にアクセスポイントを追加したい。こうした話は、家を建てる時点では想像しにくいものです。
そのとき配管が通っていれば、ケーブルを1本通すだけで済みます。通っていなければ、壁を開けるか、廊下や階段に露出配線を這わせるかの選択になります。費用も手間も、後からの方が圧倒的に大きいのです。
LANケーブルを最初から通してもらう場合は、Cat6Aを指定しておけば十分です。将来10ギガ回線を使うことになっても対応できます。
建築中:引き込み経路を確認しておく
光ケーブルは、最寄りの電柱から建物の外壁へ架け渡して引き込みます。このとき現場で問題になりやすいのが次の点です。
- 電柱から建物までの経路:他人の敷地や私道を越える必要がないか
- 地上高:道路や駐車場の上を通る場合、法令で定められた高さを確保できるか
- 引き込み位置:外壁のどこで受けるか。カーポートや庭木が干渉しないか
これらは工事当日に判明すると出直しになることがあります。ハウスメーカーや工務店に「光回線の引き込み位置はどこを想定していますか」と一度確認しておくと安心です。
工事ができない原因の詳細は工事ができないと言われたらにまとめています。
建築中:ハウスメーカーが手配するのか、自分でやるのか
ここは混乱しやすいポイントです。
- ハウスメーカー・工務店が回線契約まで手配してくれる場合:提携先の事業者になることが多く、選択肢が限られることがあります
- 自分で申し込む場合:回線を自由に選べますが、申込みのタイミングは自己管理になります
どちらの形式なのかを早めに確認してください。「てっきり手配されていると思っていた」という行き違いで、入居後しばらくネットが使えない、というのは避けたい事態です。
回線選びの考え方はスマホのセット割で選ぶや工事条件で比較を参考にしてください。
申込みのタイミング:住所が確定してから、できるだけ早く
新築でつまずきやすいのが、申込みには確定した住所が必要という点です。造成地などでは住居表示がまだ付いておらず、エリア判定ができないことがあります。
- 住所が確定したら、その時点ですぐ申し込む
- 工事は引き渡し後(鍵を受け取ってから)になります。引き渡し日を伝えて、それ以降で工事枠を押さえてください
- 2〜4月は工事枠が埋まります。引っ越し時期がこの期間に重なるなら、特に早めに動いてください
入居してから申し込むと、ネットのない期間が数週間続くことになります。この流れは光回線工事の流れでも解説しています。
引き渡し後:ルーターは2台構成が正解
住み始めてからの話ですが、設計段階の判断がここに効いてきます。
情報分電盤にルーターを1台だけ置く構成だと、家の隅の壁の中からWi-Fiを飛ばすことになり、リビングでも電波が弱いということが起こります。かといってルーターをボックスから取り出すと、ボックス内のハブがインターネットに繋がらなくなり、各部屋のLANポートが全部使えなくなります。
そこで現実的なベストが、ルーター2台構成です。
- 1台目はボックス内:ONUに接続し、各部屋のLANポートへ有線を供給する
- 2台目はリビングなどのLANポートに接続:こちらがWi-Fiの発信担当。ブリッジモード(アクセスポイントモード)に切り替えて使う

この構成を取るために、設計段階で「リビングにLANポートを用意しておく」ことが効いてくるわけです。詳しくはルーターの置き場所と家の材質の記事で解説しています。
よくある質問
新築でも工事は必要ですか?
必要です。建物が新しくても、電柱から光ケーブルを引き込む工事は発生します。無派遣工事になるのは、既に光設備が引き込まれている場合だけです。
引き渡し前に工事してもらうことはできますか?
原則できません。鍵の引き渡し後、立ち会いができる状態になってからの工事になります。工期に余裕がある場合は、ハウスメーカーに相談してみてください。
各部屋のLANポートは今どき必要ですか?
「Wi-Fiで足りる」と考えて省く方が多いのですが、現場の立場からは入れておくことをおすすめします。理由は、通信の使い方が住んでいるうちに変わるからです。お子さんがオンラインゲームを始めて有線が欲しくなる、在宅勤務の部屋が変わる、上の階にアクセスポイントを足したくなる。こうした変化は、建てる時点では読めません。
配管さえ入っていればケーブルを通すだけで対応できますが、なければ壁を開けるか露出配線になります。少なくとも配管だけは各部屋に入れておくのが、後悔の少ない選び方です。
10ギガ回線を将来使うかもしれません。何を準備すべき?
宅内のLAN配線をCat6Aにしておくことです。ただし10ギガは回線側の対応エリアも限られ、宅内機器もすべて対応が必要になります(10ギガの落とし穴)。「配管とCat6Aだけ用意しておく」くらいがちょうどいい備えです。
まとめ:壁の中に道を作れるのは、建てているときだけ
- 情報分電盤の位置は打ち合わせで相談を。できれば家の中心寄り、内部に電源があるか確認
- 情報分電盤と各部屋への空配管を頼んでおく。分電盤があれば各部屋まで配管が通るのが基本だが、そもそも付いていない家も多い
- 「Wi-Fiで足りる」と省きがちだが、子どものオンラインゲームや在宅勤務など、有線が欲しくなる場面は後から来る
- LANを通すならCat6A。リビングにLANポートがあると、あとでWi-Fiの自由度が上がる
- 引き込み経路と地上高は、ハウスメーカーに一度確認を
- 住所が確定したらすぐ申込み。工事は引き渡し後、繁忙期は枠が埋まる
- 住み始めたら、情報分電盤の家はルーター2台構成が正解
工事の日に私たちができるのは、用意された条件の中で最善を尽くすことだけです。本当に効くのは、その前の打ち合わせのひと言。この記事の内容を、次の打ち合わせで一つでも伝えてもらえたら嬉しいです。



