Wi-Fiルーターの置き場所と家の材質|「届かない」の原因を現役工事人が解説

Wi-Fiが2階に届かない原因は家の材質と置き場所にあります。現役工事人が材質ごとの電波の通りやすさ、新築の情報分電盤の落とし穴、ルーター2台構成の組み方を解説します。

石膏ボード・木材・コンクリート・金属の壁ごとにWi-Fiの電波の届き方を比べた図解

「回線を変えたのに2階に届かない」「隣の部屋なのに極端に弱い」。速度や電波の相談で機器まわりを見せてもらうと、原因はルーターの性能ではなく、家そのものにあることがよくあります。

私たち工事人は、毎日いろいろな構造の建物で作業しています。木造、鉄骨、鉄筋コンクリート、新築、築古。その経験から言えるのは、Wi-Fiの飛び方は「何を隔てて飛ばすか」でほぼ決まるということです。

この記事では、材質ごとの電波の通りやすさと、最近の住宅ならではの落とし穴(情報分電盤)、そのうえでの置き場所の考え方を解説します。

大前提:電波は「材質」で決まる

Wi-Fiの電波は、障害物を通り抜けるたびに弱くなります。どれくらい弱くなるかは、材質次第です。ざっくりした目安を表にします。

材質・構造 電波の通りやすさ 家の中のどこにあるか
石膏ボード・木の間仕切り壁 ◎ ほぼ通る 室内の壁の大半
木の床・天井 ○ 通るが減衰 木造の階間
鉄筋コンクリートの壁・床 × 大きく遮る マンションの戸境・RC造の構造壁
金属(スチール棚・冷蔵庫・ユニットバスの壁) × 反射・遮断 家具・水回り
水(水槽・給湯器まわり・人体) △ 吸収する 水回り全般
金属膜入りの断熱材・遮熱シート △〜× 製品による 外壁・屋根の内部
金属膜コーティングの窓ガラス(Low-E) △ 意外と通しにくい 最近の家の窓

ここから言えることは2つです。

同じ「壁1枚」でも意味がまったく違う

室内の間仕切り(石膏ボード)ならほぼ素通りしますが、マンションの戸境やRC造(鉄筋コンクリート造。コンクリートの中に鉄筋を入れた構造で、中〜大規模マンションに多い建て方です)の構造壁は電波の行き止まりです。

物件情報で「RC造」「SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)」と書かれていれば、Wi-Fiにとっては手強い建物だと思ってください。「木造2階建てなら1階から2階へ届くのが普通、RCマンションで部屋をまたぐのは苦しい」。現場の肌感覚もこの表のとおりです。

「最近の家ほど飛びにくい」ことがある

高断熱・高気密の住宅は、金属膜入りの断熱材やLow-Eガラスが使われていることが多く、昔の木造よりも電波がこもったり、逆に部屋間で通りにくかったりします。「新築なのにWi-Fiが弱い」という相談には、こういう背景があります。

石膏ボード・木材・コンクリート・金属の4枚の壁ごとに、ルーターからスマホへ届く電波の弱まり方を比べた図
同じ「壁1枚」でも、石膏ボードと鉄筋コンクリートでは電波にとって別物です。

最近の家の落とし穴:情報分電盤の中のルーター

ここ数年の新築戸建てで急増しているのが、情報分電盤(情報ボックス)です。壁に埋め込まれた樹脂製のボックスに、テレビ・LAN・電話の配線を集約するもので、光回線のONUやルーターもこの中に収める設計になっている家が多くあります。

配線が隠れて見た目はスッキリしますし、各部屋へのLAN配線の起点としては理にかなった設備です。ただ、Wi-Fiの発信元をこの中に入れるのは、電波的にはかなり不利です。

  • ボックスの扉と壁の中に押し込むため、そこで既に減衰する
  • 設置場所が洗面所・収納・玄関脇など、家の隅であることが多い
  • 狭い密閉空間なので熱もこもりやすい

つまり「家の隅の、壁の中の、扉の奥」からWi-Fiを飛ばすことになります。新築で「なぜかリビングでWi-Fiが弱い」というお宅は、まずここを疑ってください。

情報分電盤内で光回線がONU、ルーター、LANハブを経由して各部屋へ分配され、箱の中ではWi-Fiが届きにくいことを示す図解
情報分電盤は有線LANの起点として便利ですが、Wi-Fiの発信場所としては不利です。

情報分電盤がある家の正解:ルーターは2台用意する

ここで一つ注意点があります。「Wi-Fiが弱いから」とボックス内のルーターを取り出して、リビングのLANポートに繋いでしまうと、そのルーターより上流にあるボックス内のハブがインターネットに繋がらなくなり、他の部屋のLANポートが全部使えなくなります。各部屋に有線LANを引いてあるのに、それが全部無意味になってしまうわけです。

そこで現実的なベストは、ルーターを2台使う構成です。

  1. 1台目はボックス内に設置:ONUに接続し、各部屋へのLAN配線に有線インターネットを供給する役割。ここは今までどおりです。
  2. 2台目はリビングなど、よく使う部屋のLANポートに接続:こちらがWi-Fiの発信担当になります。

こうすれば、各部屋の有線LANは生かしたまま、Wi-Fiだけを電波の届きやすい場所から飛ばせます。

情報分電盤の中のONUと1台目ルーター、LANハブから各部屋へ配線し、リビングの2台目ルーターをブリッジモードで接続してWi-Fiを飛ばす構成図
1台目は分電盤の中で各部屋への有線を担当し、2台目をよく使う部屋に置いてWi-Fiを飛ばします。
情報分電盤内の1台目ルーターとLANハブからリビングの2台目Wi-Fiルーターへ接続し、ブリッジモードで電波を飛ばす図解
各部屋の有線LANを維持したまま、よく使う部屋の2台目からWi-Fiを飛ばします。

材質を踏まえた置き場所の考え方

一般論の「家の中心・高い場所」に、材質の視点を足すとこうなります。

  • ルーターと「よく使う場所」の間に、何を挟むかで考える:距離よりも「間にRC壁・金属・水回りがあるか」の方が支配的です。間取り図を見て、電波の通り道に何があるかを考えてください
  • 床置きを避けて1〜2mの高さへ:床への吸収を避けるだけで広がりが変わります
  • 金属の裏・収納の中・水回りの隣は避ける:テレビ裏、スチールラック、ユニットバスの隣の壁際は定番のもったいない置き場所です
  • RC造で階や戸境をまたぐのは、1台では基本無理と考える:置き場所の工夫で粘るより、LAN配線+アクセスポイント追加やメッシュWi-Fiに切り替えた方が早いです

それでも届かない場合の考え方

材質と置き場所を踏まえても届かない場合、「1台で全部カバーする」発想を捨てるのが近道です。

LANケーブルで飛ばして、そこからWi-Fiを出す:電波が苦手な壁は、有線で越えるのが確実です。情報分電盤からの各部屋配線、空配管、最悪は露出のLANケーブルでも、電波で苦戦するより安定します。

メッシュWi-Fi・中継機:配線が難しい場合の選択肢です。RC造や3階建てなど「材質・構造的に1台では無理」な家では、最初からメッシュ前提で考えた方が満足度は高いです。機器の選び方はルーターとLANケーブルの選び方で解説しています。

これから工事する人は、逆算で設置場所を決める:光コンセント(=ONUの位置)は工事の最初に相談できます。「どこでWi-Fiを使いたいか」から逆算して希望を伝えてください。情報分電盤のある家では、「ボックスの外にルーターを置く前提で、どの部屋のLANポートを使うか」まで考えておくと完璧です(当日準備の記事参照)。

なお、これから家を建てる方は、そもそも情報分電盤の位置や各部屋への配管を設計段階で相談できます。打ち合わせで伝えることは新築戸建ての光回線にまとめました。

よくある質問

木造2階建てで、1階のルーターから2階に届きません

木造なら本来は届きやすい構造です。ルーターが床置き・収納の中・家の隅になっていないか、経路に金属(ユニットバスや冷蔵庫)を挟んでいないかを確認してください。それでも弱ければ、ルーターの古さ(5〜6年以上前なら買い替え検討)や、2階のLANポートへのアクセスポイント追加を。

鉄筋コンクリートのマンションで、隣の部屋の電波が弱いです

RC壁を挟んでいるなら、それが原因の可能性が高いです。扉の開口部を通る配置にルーターを寄せるか、有線+アクセスポイント、メッシュWi-Fiを検討してください。壁の材質は機器では超えられません。

情報分電盤の中にWi-Fiルーターを置くよう業者に言われました

配線をまとめる意味では自然な案内ですが、Wi-Fiの電波としては不利です。ボックス内のルーターはそのまま各部屋への有線供給用として残し、Wi-Fi用にもう1台をリビングなどのLANポートに繋ぐ(ブリッジモード)構成がおすすめです。

2.4GHzと5GHz、どちらに繋ぐべきですか?

置き場所との関係で言えば、遠い部屋や階をまたぐ場所では2.4GHzの方が届きます。詳しくは2.4GHzと5GHzの違いで解説しています。

まとめ:家の材質を知れば、打つ手が変わる

  • Wi-Fiの届き方は距離より「間に挟まる材質」で決まる。石膏ボードは素通り、RC壁と金属は行き止まり
  • 高断熱住宅やLow-Eガラスなど、最近の家ほど電波が飛びにくい要素がある
  • 情報分電盤にルーターごと収めるのは電波的に不利。ただし取り出すと他の部屋の有線LANが死ぬので、ルーター2台構成(ボックス内+リビングにブリッジモードで1台)がベスト
  • RC造で階・戸境をまたぐなら、置き場所で粘らず有線+アクセスポイントかメッシュへ
  • 最後は「やってみないと分からない」。置いて、測って、動かすで答え合わせを

家の材質は変えられませんが、材質を知っていれば「どこで粘って、どこで諦めて有線にするか」の判断ができます。回線やルーターを買い替える前に、まず家と電波の相性を見てみてください。

光回線の現役工事人のイラスト

この記事を書いた人

光回線の現役工事人

現役の光回線工事スタッフとして、いまも日々現場に出ています。戸建て・集合住宅の開通工事の経験をもとに、工事前に知っておきたいことを解説しています。

運営者の経験と編集方針を見る